<ニュース概要>
65歳からのお部屋探しを専門で支援する株式会社R65は、全国の65歳以上で賃貸住宅を探した経験のある500名を対象に「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」を実施しました。本調査は、2025年7月28日〜30日にかけてインターネット上で実施されました。
背景
日本は世界で最も高齢化が進む国の一つでありながら、高齢者が賃貸住宅を借りにくい状況が続いています。貸主側には「孤独死による事故物件化」などへの不安が根強く残っており、R65が2023年に実施した調査では、65歳以上の26.8%が年齢を理由に入居を断られた経験があることが判明しました。
一方で、国土交通省は2024年に「住宅セーフティネット法」の改正法を成立させ、2025年10月から施行予定です。住宅提供者への支援や見守り体制の強化などが盛り込まれており、高齢者が安心して住まいを確保できる環境整備が期待されています。
※高齢者の4人に1人以上が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験。収入による差はなし。【高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)】
主な調査結果
約半数が「部屋探しで苦労」
65歳以上で賃貸住宅を探した人のうち、「とても苦労した」15.6%、「やや苦労した」27.2%を合わせて42.8%が苦労を感じたと回答しました。特に直近1年以内では61.2%が苦労を実感しており、過去に比べて難しさが増している実態が明らかになりました。

約3割が「年齢を理由に入居拒否」
調査対象者全体の29.8%が年齢を理由に入居を断られた経験があると回答しました。直近1-2年では36.7%に上り、5回以上断られた人は22.4%に達しました。2023年調査(「年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験のある高齢者」26.8%)と比べても増加傾向にあります。


苦労の最大要因は「候補物件が少ない」
部屋探しでの具体的な苦労では「候補となる物件情報が少なかった」が52.8%で最多、直近1年以内では63.3%に増加しました。さらに「経済的負担が大きかった」(31.3%)、「条件に合わない物件を紹介された」(17.3%)なども課題となっています。

内見の満足度は二極化
内見候補の満足度については「どちらとも言えない」が42.8%で最多でしたが、直近1年では「非常に満足」16.3%と「非常に不満」10.2%が突出し、評価が二極化する傾向が見られました。

引っ越し理由は「広さ」と「家賃」
部屋探しの理由では「適切な広さへの住み替え」(36.2%)が最多で、「家賃の低い物件への住み替え」(23.6%)が続きました。一方、「オーナーからの立ち退き要請」は1〜2年前に最も多く16.4%に達しました。

総括
調査の結果、制度整備が進む一方で、現場では高齢者が直近ほど部屋探しに苦労している現状が浮き彫りになりました。特に「候補物件の不足」や「家賃上昇」といった課題が深刻化しており、東京都23区内では単身向け賃貸の平均家賃が前年同月比11.5%上昇しているとのデータもあります。
2030年には単身高齢者世帯が800〜900万世帯に達すると予測されており、今後も行政と不動産業界が一体となって、高齢者が安心して住まいを確保できる仕組みづくりが求められています。
※東京23区で供給される賃貸物件の賃料は前年比1割超アップ!一方、消費者需要の賃料水準はわずかな上昇にとどまる
まとめ
今回の調査で浮かび上がったのは、「制度上の改善」と「現場での実感」の乖離です。住宅セーフティネット法の改正や見守り施策の拡充といった制度整備は着実に進んでいる一方で、実際に部屋を探す高齢者は「候補物件が少ない」「家賃が高い」といった根源的な課題に直面し続けています。特に都市部では家賃上昇が顕著で、所得が限られる高齢者にとっては選択肢が一層狭まる現状があります。
また、年齢を理由とした入居拒否が依然として増えている点は、社会的な偏見や貸主側のリスク回避姿勢が根強いことを示しています。制度が整っても、貸主の心理的ハードルが解消されなければ「住まい難民」は減少しません。
今後求められるのは、単に制度を整えるだけでなく、「貸す側の不安を和らげる仕組み」を社会全体で築くことです。例えば、見守りサービスや家賃保証制度のさらなる普及、孤独死リスクを減らすための地域コミュニティ連携などが考えられます。
高齢者が「安心して住みたい場所に住める」社会を実現するためには、不動産業界・行政・地域社会が連携し、制度と実態の溝を埋めていく不断の努力が欠かせないといえるでしょう。
※画像参照:PR TIMES



















