<ニュース概要>
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協)は、近年社会問題化しているカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策として、「カスタマーハラスメント対策ガイドライン」を策定し、2025年6月に発表する予定です。
■ 賃貸住宅管理業界におけるカスタマーハラスメントの実態
日本では、国民の約3割が賃貸住宅での生活を営んでおり、その管理業務は、快適な住環境の維持に欠かせない重要な役割を果たしています。しかし、賃貸住宅管理業者は、入居者と賃貸住宅オーナーの間に立ち、双方の要望や課題に対応する立場であるため、トラブルの仲介役となることが少なくありません。その結果、過剰な要求や不当な言動がカスタマーハラスメントへと発展する事例が増加しています。
日管協では、これまで『賃貸住宅クレーム・トラブルQ&A Vol.1~3』を公開し、対応方法の案内を行ってきました。今回、よりカスハラに対応していくために、会員企業を対象に実施したアンケート(回答数577件)では、以下のような事例が報告されました。
- 入居者から深夜や早朝に「すぐに修理しろ」と怒鳴られる
- 従業員に対し、解雇や土下座を強要し、応じなければSNSで拡散すると脅される
- オーナーから、入居者が決まらないことを理由に長時間の正座を求められる
このような行為は、従業員に深刻な精神的負担を与え、業務に支障をきたすだけでなく、離職の原因にもなっています。賃貸住宅の安定的な管理を継続するためには、カスハラを業界全体の課題と認識し、適切な対策を講じることが求められています。
■ 2025年6月に「カスタマーハラスメント対策ガイドライン」を発表
日管協では、今回の調査結果を踏まえ、2025年6月に「カスタマーハラスメント対策ガイドライン」を発表する予定です。本ガイドラインは会員企業向けに公開され、業界全体のカスハラ対策を推進することを目的としています。主な内容は以下の通りです。
- 賃貸住宅管理業界におけるカスタマーハラスメントの発生状況
- 具体的な事例の紹介と対応策(オーナー対応・入居者対応など)
- 実務で活用できるQ&A
また、業界全体での意識向上を目的として、啓発ポスターの作成や「日管協標準版契約書」への条文追加を行い、カスハラ防止に向けた取り組みを強化する方針です。
■ まとめ
カスタマーハラスメントは、近年、飲食業や医療業界などさまざまな業界で問題視されており、賃貸住宅管理業界においても大きな課題となっています。特に、賃貸管理業者はオーナーと入居者の間に立つ立場であるため、対応が難しく、従業員への負担が大きいのが現状です。
今回のガイドライン策定は、業界全体でカスハラの問題に取り組む第一歩となるでしょう。今後は、企業ごとの対応力向上だけでなく、法的整備や行政との連携によって、より実効性のある対策が求められると考えられます。