CULUMU、LIFULL、日建設計、日建設計総合研究所、東京大学が暮らし・まちづくりのInclusive Designに関する産学連携、共同研究を開始
<ニュース概要>
インクルーシブデザインスタジオ CULUMU と 株式会社LIFULL は、株式会社日建設計、株式会社日建設計総合研究所(NSRI)、および 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻・松田雄二研究室 とともに、暮らしやまちづくりにおけるアクセシビリティとインクルーシビティ(包摂性)の向上を目的とした共同研究を開始しました。
本研究では、住宅に関する課題やニーズ調査を起点に、誰もが安心して住み続けられる社会の実現を目指します。特設サイトも公開されています(https://lili.culumu.com/)。
■ 研究の目的と背景
日本では急速な高齢化が進み、心身の変化に対応した住宅を求める「住宅弱者」(高齢者や障害のある方など)が増加しています。
しかし現状では、安心して住み続けられる住宅を選ぶための客観的な指標や情報が不足しています。
今回の共同研究では、住宅弱者が安心して住み続けられるための住宅性能や条件の体系化を目指します。住宅供給者側には設計・開発・サービスの改善を促し、利用者側には適切な住宅選びを支援する仕組みを構築する方針です。将来的には、住宅分野を超えて都市空間や社会全体の包摂性を高める仕組みづくりへと発展させる構想です。
■ 研究内容:住宅のインクルーシブデザイン評価に関する基礎調査
本研究の初期段階では、「住宅弱者」が住宅を選択する際にどのようなニーズを持っているのかを明らかにするため、ヒアリングや訪問調査を実施します。
得られたデータは利用者の特性やライフステージ別に整理し、体系的なニーズ分類を行うことで、住宅供給者・利用者双方が活用できる情報基盤を構築する予定です。
この研究成果は、将来的に都市空間や公共施設などにおけるインクルーシブデザインにも応用される見込みです。
■ 共創体制:多様な専門性の融合
本プロジェクトは、企業・研究機関・大学がそれぞれの専門性を持ち寄る共創型研究として進行します。
CULUMU
- 多様な当事者団体・コミュニティとのネットワーク活用
- 調査における参加型アプローチによる当事者の声の反映
- 各種評価の社会的インパクト検証と手法の構築
株式会社LIFULL
- 不動産・住宅情報プラットフォームのデータ活用
- 市場展開のためのマーケティング視点の提供
- 情報提供の障壁解消に向けた実証知見の提供
株式会社日建設計
- 建築、都市に関する法令、条令、技術的アドバイス
- 建築、都市環境におけるバリアフリー、ユニバーサルデザインの知見の提供
- イクルーシブデザインアプローチを取り入れた設計プロセス技術の提供
株式会社日建設計総合研究所(NSRI)
- 社会調査やデータ収集・分析の研究力の提供
- 既存研究・データの整理・分析
- 政策・制度面からの指標開発支援
東京大学 松田雄二 准教授(大学院工学系研究科建築学専攻)
- 研究全体の学術的指導、調査設計・分析手法の監修
- インクルーシブデザインの概念整理と理論的枠組みの構築
- 調査結果の学術的妥当性の担保と国内外事例の知見還元
このように、学術・実務・市場を横断した連携により、より実効性のある成果を目指しています。
■ 調査結果:住宅弱者のバリアフリー化ニーズと実態
共同研究の一環として実施された「住まい・まちづくりのインクルーシブデザインに関する実態調査」では、全国691名を対象に住宅のバリアフリー意識を調査しました。
主な結果は以下の通りです。
バリアフリー住宅の検討“未経験者”は一般層で約9割
高齢になるほど検討率は上昇するものの、若年層では「必要性を感じていない」傾向が強く見られました。

バリアフリーの必要性を感じるのは障害当事者で約57%、一般層では28%
一般層では「将来への備え」という意識が中心で、現時点の実感が乏しい傾向にあります。

障害のある当事者の約58%が非バリアフリー住宅に居住
ニーズは高いにもかかわらず、実際の住環境が追いついていない現状が浮き彫りになりました。

改善を望む箇所の上位は「浴室の安全性」「玄関・屋内の段差」「トイレ」「屋外アプローチ」「キッチン」
日常生活に直結する項目が上位を占めており、安全性と使い勝手の両立が課題とされています。

■ 調査概要
- 実施期間:2025年8月26日〜9月16日
- 調査方法:インターネットおよびアンケート調査
- 対象者:全国の20歳以上691名(うち障害当事者または家族160名)
- 主体:株式会社LIFULL、Inclusive Design Studio CULUMU
■ まとめ
住宅や都市空間の“インクルーシブデザイン”は、単なるバリアフリーを超えた社会の包摂性を問うテーマです。今回のLIFULLとCULUMUらによる共同研究は、住宅弱者の「声」を可視化し、学術・企業・当事者が連携して社会実装を目指す点で非常に意義深い取り組みといえます。
今後、調査結果を基に具体的な設計基準や評価指標が整備されれば、住宅業界全体の設計思想に新たなスタンダードをもたらす可能性があります。
“誰もが安心して暮らせる社会”を実現するための、第一歩として注目されます。
■各法人からのコメント
CULUMU CDO 川合 俊輔 氏 CULUMU CDO 川合 俊輔 氏
この度は、各分野を代表する皆様と共に、社会的に意義深い共同研究を始動できることを光栄に思います。これまでの『誰かのために』と設計されてきた住まいを、『誰かと共に』創るかたちへと転換することが今、求められています。私たちCULUMUは、インクルーシブデザインスタジオとして培ってきた多様な当事者コミュニティとの繋がりを活かし、研究の根幹となるニーズ調査を担い、そこから得られる声を指標開発へと繋げてまいります。一人ひとりのリアルな声を丁寧に拾い上げ、指標という客観的なかたちにすることで、誰もが自分らしい暮らしを選択できる社会の実現に貢献してまいります。
国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻 松田 雄二 准教授 国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻 松田 雄二 准教授
「住まい」とは、私たちが自立した生活を営むための、もっとも根源的な拠点と言えます。その「住まい」のあり方は、歴史と共に様々な変遷・進化を遂げていますが、昨今の社会の多様化には、未だ追随できていないと考えています。その最たる部分が、高齢化や障害のある人々など、多様な住み手に対しての対応です。本研究によって、「住まい」に求められる進化すべき部分とその方向性が明らかになり、多様性をはぐくむ社会インフラとしての「住まい」の条件が明らかになることを期待しています。
株式会社日建設計 インクルーシブデザイン研究チーム 西 勇 氏 株式会社日建設計 インクルーシブデザイン研究チーム 西 勇 氏
私たちが暮らす建築や都市は、すべての人に開かれた公平な空間であるべきです。日建設計インクルーシブデザイン研究チームは、多様な人々と共に考え、包摂的な社会環境をデザインしています。実現のためには、仕組みづくりや多様な状況への理解を深める必要があります。今回の連携を通じ、専門性を結集し、住宅・建築・都市のアクセシビリティ向上を目指します。
株式会社日建設計総合研究所 今枝秀二郞 氏 株式会社日建設計総合研究所 今枝秀二郞 氏
高齢者、若年層、子ども、障害のある人など、人々を分類する言葉は多くあります。しかし、例えば「高齢者」と一括りにしても、年代や体力、持病の有無など、その身体状況や暮らし方、家族構成など取り巻く環境はそれぞれ異なります。本来、社会や建築は、こうした個々の違いや個性を尊重し、特性を活かせることを前提にデザインされるべきです。本共同研究において、日建設計総合研究所では“すべての人々”が自分らしく暮らせる住環境の実現を目指します。そのために、建築やまちづくりなど様々な分野の専門家と連携し、アカデミックな知見と現場での実践を結びつけながら、より包摂的で持続可能な社会インフラとしての「快適で優しい住まい」のあり方を追求します。
株式会社LIFULL LIFULL HOME’S FRIENDLY DOOR責任者 龔 軼群 氏 株式会社LIFULL LIFULL HOME’S FRIENDLY DOOR責任者 龔 軼群 氏
人が暮らしていく中で、住まいを取り巻く環境がアクセシブルということは基本的人権だと捉えています。しかし、現在の社会は必ずしもそうなってはいません。高齢になっても、身体的ハードルを持ったとしても、多様な個人が自分らしく住まい、暮らすことができる社会のスタンダードをつくるために、LIFULLは住まいの情報プラットフォーマーとして専門性を発揮し、他社と協働することでアクションしていきます。
PR TIMES
※画像参照:PR TIMES
























